ジョナサン・アンダーソンが25年4月17日、LVMH(ルイヴィトンモエヘネシー)の年次株主総会において、Diorの次期メンズ アーティスティックディレクターに就任すると発表された。25年1月に前任であるキム・ジョーンズの退任が発表されて以降様々な後任が噂されたが、今回の発表はファンの期待に応える大きなサプライズとなった。
ディオールのメンズラインでは6人目のディレクター就任となるジョナサン・アンダーソン。特に2001年、エディ・スリマン就任以降のディオール オムは世界的に注目度が上がり、メンズメゾンブランドとして確固たる地位を確立したと言える。各デザイナーが担当した時代、主な功績を列挙した。

それではジョナサン・アンダーソンに求められること、その背景とは何か。
それはセンセーショナルなディオールメンズの再来を、日本を中心とするアジアで起こすことだと筆者は感じる。
LVMHの25年第1四半期(25年1月〜3月)は全体で-3%の減収となったが、日本で-1%、日本を除くアジアで-11%と大きく売上を落とす結果となった。ファッション部門のアジア復調はLVMHの先見命題と言える。
その裏付けとして、ディオールのウィメンズラインでは25年4月19日から約3ヶ月の企画”Designer of Dream”エキシビションをソウルにて開催。ブランド価値の発信に重点を置く施策と言える。またジョナサン・アンダーソンはユニクロとのコラボレーションで日本国内でも知名度があり、ディオールの売上だけでなく、古巣ロエベの駆け込み需要の促進、自身のブランドであるJ.W.AndersonとのシナジーもLVMHは期待できる。

また25年4月初旬にはLVMH内の人事異動が発生し、「LOUIS VUITTON ルイ・ヴィトン」、「FENDI フェンディ」、「KENZO ケンゾー」3ブランドのCEOを変更するニュースが飛び込んだ。
フェンディ新CEOにはルイ・ヴィトン中国のCEOであるラモン・ロス氏が就任。他方ルイ・ヴィトン中国の新CEOにはダニエル・ディチッコ氏が就任。特筆すべきこととして、ダニエル氏はCOACHで日本・北アジアの社長兼CEOを担当した後、Apple社に移り日本と韓国を担当。2018年よりApple Retail部門のグローバルリーダーとして店舗設計や顧客体験を担当してきたとのこと。
つまりLVMH内の二つのブランドにおいて、アジア(日本・中国・韓国)に精通したCEOを任命したと言える。為替や価格高騰が大きく影響し、売上が落ち込んでるメゾン・ラグジュアリーにおいて、一新された顧客体験を通じて、復活の兆しを見出したいはずだ。
約11年間ジョナサン・アンダーソンがロエベで見せた夢のような、だが素材や技術に裏付けされた素晴らしい製品の数々は間違えなくロエベにとって大きな礎になったと言える。
ディオール オムでのジョナサン・アンダーソンは25年6月27日にお披露目予定となる。
“ディオール オム ジョナサン期”に注目だ。